当事務所は、輸出入に係る法律問題の一つとして通関トラブル発生時のアドバイスも提供しております。
通関トラブルには、大きく分けて、(1)輸出入に関する取引の相手方とのトラブル、(2)通関業者とのコミュニケーションがうまくいかない等の通関業者とのトラブル、(3)税関から指摘を受ける等の税関とのトラブルがあります。
(1)輸出入に関する取引の相手方とのトラブル
これは、通常の商取引のトラブルであり、送られてきた商品が約束していた内容と異なっていた場合が典型例ですが、この場合は契約に基づき、どのような主張をしていくかという問題になります。海外への相手方のため、海外の法令との関係で問題がないかや、どのように契約を遵守させるかという難しい問題はありますが、基本的には通常の商取引の中で生じるトラブルと同じものといえます。
(2)通関業者とのトラブル
貿易を行う場合、物の輸出入の際に、輸出する国と輸入する国の双方で、両方の税関に対する通関と呼ばれる手続を行う必要があります。
この通関手続は、相当程度に専門的な手続であり、特殊な書類等を作成する必要がある関係で、自分達で行うことには相当の負担が生じることになります。
したがって、ビジネスの実務では、自分達の代わりに通関手続を代理して行ってくれる専門の業者である通関業者に依頼するケースがほとんどです。
もっとも、通関業者に依頼した場合でも、様々な経緯で、通関業者との間でコミュニケーションがうまくいかず、トラブルに発展する場合があります。
このようなとき、輸入者の代理人として弁護士が介入し、法令に基づいた交通整理を行うことで、関係を正常化する等してトラブルを解決できる場合があります。
(3)税関とのトラブル
上記(2)で述べたとおり、貿易を行う場合には、税関との間で、通関と呼ばれる一定の手続を行う必要があります。
この通関手続に関して、税関との間でトラブルになる場合があります。貿易に関係する法令は多種多様なものがありますが、以下、代表的なものをいくつかご紹介いたします。
① 適切な申告価格で輸入申告ができていないと疑われるトラブル
関税及び輸入消費税は、輸入申告時に申告する価格(課税価格といいます。)に、所定の関税率・輸入消費税率を乗じて計算されます。そのため、輸入通関の際の申告価格が間違っていた場合には、税金の申告漏れが生じていることになります。
日本の輸入通関制度は、輸入通関時点では貨物をスムーズに流通させることを優先して、基本的に申告した価格での輸入通関を認め、事後的な調査で申告した価格が適正であったかを検証することを前提としています。
しかし、輸入通関時において、あまりに不自然な金額で課税価格を算定して申告していたり、税関の質問に対して適切な説明ができなかったりした場合には、税関に適切な輸入申告ができていないのではないかと疑問を持たれ、税関から取引に関する質問を受け、その質問に回答するまで貨物の輸入許可を受けられなくなるというトラブルに発展することがあります。
このようなトラブルは、輸入者において認識が甘く適切な検討ができていないことに原因がある場合もあれば、外国の業者が適切なインボイスを作成せず(例えば、低価のインボイスを作成してアンダーバリューになってしまっていることがあります。)に貨物を送ってくることに原因がある場合もあります。
また、輸入者としては気を付けているつもりでも、申告すべき課税価格の計算方法の理解が不十分であるため低い金額での申告をしてしまう場合もあります。例えば、日本の会社が外国の工場に商品の製造を発注してその製造物を輸入する場合に、日本の会社から外国の工場にタグや金型を無償で提供していることがあります。関税定率法に基づけば、こうしたタグや金型の代金相当額及び無償提供物を提供するために要した運賃などの諸費用を課税価格に加算して申告する必要があります(関税定率法4条1項3号)。しかし、この点を見逃してしまって、実際に低い金額で申告してしまっているケースは珍しくありません。
他にも、税関が検査をしたところ数量違いや品違いがあったという形でトラブルになる場合もあれば、輸入代行業者と税関に疑われて取引形態に関する質問を受けるという形でトラブルになることもあります。
② 品目分類の認定に関するトラブル
関税定率法は、貨物の種類によって、品目ごとに番号を振って分類しています。これを品目分類といい、振られている番号のことを税番といったり、HSコードといったりします。
輸入時に生じる関税は、品目分類に応じて、それぞれの番号に定められた関税率を適用して計算されます。
したがって、関税を算出するには、品目分類の認定を行う必要がありますが、対象貨物が品目分類のどの番号に該当するかをめぐって、税関と意見が対立して、トラブルに発展することがあります。
関税は、日常的に行われる輸入で常時生じる種類の税金であるため、どの関税率が適用されるかによって、取引全体の収支が変わる可能性があります。そのため、場合によっては、取引の流れ全体を見直す必要が生じたり、輸入する製品の製造工程を変更する必要が生じたりなど、大きな問題に発展することも珍しくありません。
実際、品目分類が異なるだけで、適用される税率が数%変動しますので、取引金額によっては、それだけで数千万円、数百万円の違いが生じることさえ珍しくありません。
③ 輸出入に関連する法令との関係で生じるトラブル
関税法や関税定率法といった関税関係法令は、輸出入を行う場合の手続を定めた法令ですが、輸出入に関して規制する法律は関税関係法令に限られません。例えば、食品衛生法は、事業者が食品等を輸入する場合、事業者に対し、検疫所に届出をすることを求めており(食品衛生法27条)、食品等を輸入する場合には食品衛生法の視点からの検討が必須となります。また、税関は、物品の種類に従って、輸出入を規制する関税関係法令以外の関連法令があるときは、当該関連法令に従って届出等が行われているかを確認する必要があります(関税法70条)。
このように、輸出入を行う場合、物品の内容に応じて、各種関連法令が求める手続を遵守していることが輸出入手続を行う前提として求められます。例えば、税関以外の他の行政組織(例えば、食品の場合は検疫所)との間で、適切なコミュニケーションができなかったり、法令の解釈適用に意見の相違が生じたりした場合には、スムーズに通関ができずトラブルに発展することがあります。
④ 知知的財産侵害物品と疑われるトラブル
関税法は、一定の貨物について、輸出入を禁止しています(関税法69条の2、同法69条の11)。違法薬物等であれば、輸出入してはいけないことは明らかですが、通常の事業の中で問題が生じやすいものとして、知的財産侵害物品(関税法69条の11第9号、第9号の2)と疑われることで生じるトラブルがあげられます。
著名な製品の模倣品であれば、一見して知的財産を侵害しており輸出入してはいけない物品だと認識できますが、知的財産にも様々なものがあり、簡単には判断できないものも少なくありません。特に意匠やデザインとなると、判断がつき難い場合も珍しくありません。場合によっては、税関に知的財産侵害物品と疑われて、知的財産侵害物品か否かを判断する手続(関税法69条の12等)に進むという形でトラブルになることがあります。また、税関の判断次第では、犯則事件に発展してしまう場合もあります。
⑤ 禁制品と疑われるトラブル
知的財産侵害物品以外にも、禁制品を輸出入したのではないかと疑われてトラブルに発展することがあります。
もちろん、重要なことは禁制品の輸出入をしないことですが、製品によっては法令の規制対象外のものでも、税関から疑いを掛けられてしまうこともあります。商品の内容について適切な説明ができない場合には、客観的には禁制品に該当しない可能性があるのにもかかわらず、税関による禁制品という判断を覆すことができず、貨物の廃棄に応じざるを得ない場合や、犯則事件などに発展してしまう場合もあります。
当事務所では、輸入申告方法の是非の判断業務、税関事後調査への対応業務、輸出入通関に伴う税関・通関業者・取引先とのトラブルへのサポート業務を提供している他、貿易及び輸出入通関に関する様々なご相談に対応させていただいております。ご相談をご希望の場合は、電話又はメールにて、当事務所にお気軽にお問い合わせください。ご相談のお申込みはこちらから行うことも可能です。