令和5年7月付で、税関より公表された輸入申告項目及び税関事務管理人制度の見直しのうち、輸入申告者の意義の明確化(関税法基本通達67‐3‐3の2)に関する改正により、FS利用貨物(ECプラットフォーム運営事業者等が提供するフルフィルメントサービス(購入者の注文受付から配送完了までの一連の業務全般(受注、在庫管理、梱包、発送、受渡し、代金回収等)を請け負うサービス)を利用して国内で販売することを予定して輸入しようとする貨物のこと。)に関する輸入申告者が従前から変更される可能性があるため、輸入申告者の意義の明確化について、以下のとおり解説いたします。
1.改正内容
税関は、輸入申告者は、輸入貨物に係る情報を把握し、責任をもって適正な輸入申告を行う必要があるとの考えに基づき、令和5年6月30日付で関税法基本通達を以下のとおり改正し(施行期日令和5年10月1日)、輸入申告者の意義をより明確化しました。
(関税基本通達)
https://www.customs.go.jp/kaisei/tsutatsu/2023tsutatsu/2023tsutatsu592/annex1-2.pdf
※下線が改正箇所です。
(納税義務者に関する用語の意義)
6―1 法第6条に規定する納税義務者に関する用語の意義は、それぞれ次による。
⑴「貨物を輸入する者」とは、輸入取引(定率法第4条第1項に規定する輸入取引をいう。後記67-3-3の2において同じ。)により輸入される貨物については、原則として仕入書(仕入書がない場合には船荷証券等)に記載されている荷受人(輸入申告者の資格が限定されている場合(関税定率法施行令(昭和29年政令第155号)第7条第2項、第16条の2第2項、関税暫定措置法施行令(昭和35年政令第69号)第33条の5第2項等)においては、その該当者(以下「限定申告者」という。))をいい、貨物が輸入の許可前に保税地域等において転売されたような場合には、その転得者をいう(以下これらの者を「輸入者」という。)。
⑵(省略)
(貨物を輸入しようとする者の意義)
67-3-3の2 令第59条第1項第1号に規定する「貨物を輸入しようとする者」の意義については、次による。
⑴輸入取引により輸入される貨物については、前記6-1⑴に規定する「貨物を輸入する者」と同様とする。
⑵上記⑴以外の場合には、輸入申告の時点において、国内引取り後の輸入貨物の処分の権限を有する者をいい、その者以外に輸入の目的たる行為を行う者がある場合にはその者を含むものとする。この場合において、輸入の目的たる行為を行う者とは、例えば、次に掲げる者が該当する。
イ 賃貸借契約に基づき輸入される貨物については、当該貨物を賃借して使用する者
ロ 委託販売のために輸入される貨物については、当該貨物の販売の委託を受けて販売する者
ハ 加工・修繕のために輸入される貨物については、当該貨物を加工・修繕する者
ニ 滅却するために輸入される貨物については、当該貨物を滅却する者
なお、当該「貨物を輸入しようとする者」は、法第6条の規定に基づき、当該貨物に係る関税を納付する義務を負うことになるので留意する。
2.改正に伴い輸入申告者が変更になる場合
上記1の改正により、FS利用貨物について、従前、輸入申告手続き等の委託を受けた輸入代行者が輸入申告者となっていたところ、当該輸入代行者は輸入申告者になれないこととなり、ECプラットフォームでFS利用貨物を販売する販売者が輸入申告者となります。
そして、当該販売者が本邦に住所及び居所(事務所及び事業所を除く。)を有せず、若しくは有しないこととなる場合又は本邦に本店若しくは主たる事務所を有しない法人であり、本邦にその事務所及び事業所を有せず、若しくは有しないこととなる場合は、輸入申告に際し、税関事務管理人を定めて届け出る必要があります(関税法95条1項、2項)。
当事務所には、通関士資格を有している弁護士がおり、輸入申告方法の是非の判断業務、税関事後調査への対応業務、輸出入通関にともなう税関トラブルへのサポート業務を提供しております。ご相談をご希望の場合は、電話又はメールにて、当事務所にお気軽にお問い合わせください。ご相談のお申込みはこちらから行うことが可能です。